ある林業会社の社長が2代目を継いだ時に林業全体が危機的な状況にありました。
主な取引先である桶屋さんや建具屋さんがプラスチックやサッシの需要に取って代わられてどんどん廃業していったと言います。
ご自身の会社もいよいよ厳しくなったときに(株)イエローハットの創業者の鍵山さんにご相談にいったそうです。
鍵山さんは、ボランティアで日本の公衆トイレなどを掃除される会をしているのでそこでお互い便器を磨きながらのご相談だったようです。
よくそんな時にトイレ掃除のボランティアに行ったなとも思いますが。
そこで切羽詰まって相談したところ
「唾面自乾。たとえ顔に唾をかけられても、拭ったりしないで自然に乾くまで我慢しなさい。二代目はいかにして耐えるかがとても大切です。」
と言われたそうです。
こんなにも苦しいのに「ただ耐えよ」と言われた。
言われた社長どうなったかというと、覚悟が決まったようです。
「それまでは、辛さから逃げずることを考えていた。これからは現実に真正面から向き合おう」
と決めて復活されたようです。
なかなかすごいお話ですよね。
実は、ワタミ時代にアルバイトさんと一緒に店前でビラ配りをしていた時にこんな場面に遭遇しました。
そのアルバイトさんが私のちょっと先の方でビラ配りしていたら、サラリーマンに唾を吐きかけられたのです。
「このブラック企業がっ!潰れちまえ」という罵声と共にです。
衝撃的な場面でした。
アルバイトさんは何も悪くないのです。
むしろ本当にブラック企業であるならば従業員は、どちらかというと被害者のはずです。
本来なら「ブラック企業だとしても負けずに頑張れよ」とかそういう風にいうのが人間というものじゃないのか?
そして「そんなひどいことをするこの日本社会は良くないな」と腹を立てていました。
林業の社長の話を読みながら「もし、自分が唾をかけられていたら拭わずに我慢なんかできるだろうか?」
そう考えました。
我慢するのには相当な精神力が必要だと思いました。
その後、「鍵山さん」と「唾面自乾」をネットで検索しましたらもっとすごい内容が書かれておりました。
世の中には本当に精神の強い人がいるんだなと思いました。
私は若い頃、才能や感情を全面に出して発揮している人物こそ大人物だと思っていました。
派手でわかりやすかったんですね。
しかし40歳も過ぎてきて、わかってきたのは心が動じないことの凄みです。
どんなに才能があったとしても心が動じていては、才能を強みとして発揮することができないからです。
それがわかってきたと同時に、そうであることは大変難しいということもわかってきました。
もうすぐ50歳であるにも関わらず、まだまだだな、と。
自分の経験を一段深掘りさせていただくことができて感謝です。