「世界は『関係』でできている」
死ぬ前にこの本に出会えてよかったと思える本かなと。
いや、別に病気になってしまったとか重傷を負ったわけではないんです。
実は、この世の中がどういう風にできているか、子供の頃からめちゃくちゃ興味がありまして。
大人になったら全て理解できると思っていたけども、いろいろ勉強してわかったことがあります。
それは、この世の中はまだ解き明かされてないことがあることがたくさんあるということ。
でも死ぬまでにはもうちょっと解明されて、真実が知れたらいいなあと思ってるということです。
そんな時に、この本は、発想の転換で大きな一つのヒントをくれると思います。
個人的には
「人と人は競争ではなく協力していくことが正解」
ということを
歴史学や政治学、宗教学などの「観察」ではなく
ましてや
生命学、化学などの「機能」面の解剖からでもなく
最も科学的と思われる「物理学」の視点から語っていることが大収穫でした。
量子力学が登場するまで世界中のありとあらゆる頭のいい科学者がわからなかったこと、
そんな謎の一部の答えを教えてもらった感じで本当にトクしたなあと思います。
「物理世界と心的世界があるのではない。
どちらも何かと何かの関係で成り立っているものである。
絶対に確実にそこに「存在するもの」を記述する絶対的に普遍な視点は存在しない。
「関係」が「わたし」をつくっており「わたし」が「世界」を見るという「関係」をつくっている….
現代物理学の最先端は現在そのような見方をしている。
それゆえ『競争』よりも『協力』が有効だし、人は人と関わっていくのが本質である」
ということらしいです。
ここだけみても分かりませんね。
これまた本書を読めば腹落ちすると思います。
現実世界をどうやって見るのか?
心とは何か?人間とは何か?というのを考える時に読むといいかと。
著者カルロ・ロヴェリさんは欧米の複数の大学で量子重力論を研究しつつ文学賞も得る多才。
なので、一応物理学の本らしいのですが
私のような数式嫌いでも全く問題なく、むしろ一つの映画を見ているような圧倒的な文章力で読むのがやめられない、止まらない。
なにしろ文章が美しい。
竹内薫氏による日本語版解説も秀逸
日本の感覚だと物理学は「超理系」「難しい数式だらけ」「複雑怪奇な実験設備」といったイメージが強いかもしれない。だが、それは、明治期に欧米から完成形の物理学を輸入してしまったからなのだ。物理学をルーツにまで遡れば、それはあくまでも「自然哲学」であり、この世界の仕組みをひもとく思想であり、その道具として数式や実験が使われるにすぎない。思想であるからには、文学や芸術や哲学などが渾然一体となって物理学者の脳裏を駆け巡る
カルロ・ロヴェッリ. 世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論 (Japanese Edition) (pp.197-198). Kindle 版.
この本は量子力学の歴史と偉大な物理学者の思索の過程である。
そしてこの世を形作っている「モノ」
は決して「質量と運動」で表され「存在」するものではなく
「視点」と「関係」こそが、この世の主役であるということが示される。
そして
最終的に人間の意識や意味といった科学では解明できなそうな分野にまで切り込む。
この世界は素粒子からできているわけだが、その素粒子同士の相互作用のネットワークを見ていくと、あるとき「待てよ、最初に素粒子があって、それらが反応し合うのではなく、相互作用のネットワークの節(結び目)をわれわれが素粒子と呼んでいるにすぎないのではないのか?」という哲学的な疑問に突き当たる。
カルロ・ロヴェッリ. 世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論 (Japanese Edition) (p.198). Kindle 版.
「物質が単体で存在するのではなく、関係が存在する一つの見え方が物質だ」という発想の転換。
物理学から生命学、そして宗教、政治まで量子力学をめぐる幅広く深い思考。
ハイゼンベルグ、シュレィディンガー、パラレルワールド世界観、ダーウィン、確率による解釈、アインシュタイン、色即是空、エルンスト・マッハ、ボグダーノフ、レーニン、、、
最近、「ブレイキング・バッド」というドラマを見終わったばかりなので、ハイゼンベルグがどんな人か知ることができたのもよかったです^^
カルロ・ロヴェッリ. 世界は「関係」でできている 美しくも過激な量子論
NHK出版
なお
著者カルロ・ロヴェッリさんの前作「時間は存在しない」も読める物理学書として最高。
キャッチコピーも上手いですよねえ
「『時間』とは人間の生み出すものだと、
物理学者が言ったら
どう思います?」